9/13/2007

Σ部分最適 ≠ 全体最適

 
いままでの延長に明るい明日はない、混乱を読み解く中にチャンスが
 
生まれる。
 
いま、これからの3年間に遭遇できることを、喜びとしたい。


過去からのしがらみ、制度を払拭するために、
 
わたしたちは政治の停滞による混乱を選択した。
 
その結果、これからの3年間は混乱の極みを体験する。
 

そして、過去を払拭し、新たな枠組み、スキームを組み立て、
 
すてきな明日に向かって、調和、共生の取り組みが始まる。
 

まさに、希望に燃える2010年代に向けた混乱の始まりである。
 

これは、政治に限ったことではなく、社会・環境、経済、企業、個人の
 
取り組み、活動のすべてに共通して言える。
 

そのキーワードは、
 
「 Σ部分最適 ≠ 全体最適 」である。
 

多くの人がひとつの価値観および目的を共有するときは、機能分担による
 
アプローチがもっとも効率的であった。
 

しかし、基本的な便益が満たされている中で感動、心地良さなど、期待が
 
“目的を果たす手段”から“目的そのもの”へと変化し、その目的は異なる
 
価値観によって組み立てられるようになってきた。
 

部分最適のモジュールを組み合わせることで、全体の最適化をはかることが
 
徐々に難しくなってきている中で、私たちはいまだに部分最適をシグマして
 
全体を最適化する社会制度、しくみ、しがらみに囲まれて生活している。
 


◇政治の場
 
 地方の選挙区からおらが村代表として選出された国会議員に、世界における
 
 日本のあり方、国民全体を俯瞰した議論を期待することは無理である。
 

 いままでは、地方の期待の代弁者が、固有の要請を持ち寄り、多くの
 
 国民の期待に応えるべく国政を議論してきたことが、国の活力を高め、
 
 世界に貢献することにつながっていたが、結果的に官の肥大化、財政の
 
 緊迫化、硬直化をもたらした。
 

 これからは、国の活力を高め、国家としてのリスクマネジメントを議論する
 
 国政と、地方の活性化を議論する地域経営の位置付け、役割を明確にした
 
 全体最適の政治を展開することが求められている。
 

 いま、道州制の議論が始まりつつあるが、政治構造の観点から期待したい
 
 と思う。
 


◇企業経営の場
 
 多くの企業で、取締役ないし取締役会の意思決定、監督機能と、業務執行
 
 機能を分離させて、取締役、取締役会には会社の重要な方針を決定する
 
 機能を持たせ、その決定に基づく業務執行を執行役員に担当させる執行
 
 役員制度が導入されている。
 

 したがって、取締役は取締役会の意思決定に参加するが、執行役員は
 
 直接に意思決定に参加せず、決定された業務の執行に専念し、担当する
 
 業務を陣頭指揮する。
 

 しかしながら、執行役員制度を導入した企業で執行役員に専務執行役員、
 
 常務執行役員の職位名称を付与し、経営執行会議メンバーとして登用する
 
 ことは、特定業務の執行責任を担った執行役員を全社的な企業経営の
 
 意思決定に関与させることであり、部分最適を命題とする“おらが村(部門)”
 
 の代表に国の政治を議論させることと、大差ないと言わねばならない。
 

 やはり、全社的な企業経営の意思決定および監督を担う取締役が、
 
 しっかり責任を持って判断、行動することが重要であり、市場、お客様の
 
 期待に応え続ける企業であるための経営の王道ではないかと思う。
 


◇ものづくりの場
 
 お客様が目的を達成する手段としての機能性や利便性を求め、企業が
 
 顧客ニーズを充足する機能、便益や品質を追及していた時代には、
 
 個々のモジュールの改善、進化に取り組み、適当なタイミングで商品と
 
 してモジュールを組み合わせることで、お客様の期待に効率的に応える
 
 ことができた。
 

 市場では、多くのサービスや商品が同質化し、より価格の安いものが選択
 
 されるというコモディティ化に拍車がかかっている。
 
 
 一方、お客様は目的を果たすための手段である商品の機能性、利便性を
 
 超えたより高い次元の価値、感動、心地良さの経験価値を求めてきている。
 

 いまこそ、効率的な部分最適を目指したモノ割りタテ割りの事業組織による
 
 万人狙いの商品ありきの取り組みから、特定のライフスタイルやワーク
 
 スタイルの経験価値を重視したコト割りヨコ串の経験環境を提供する取り
 
 組みへの転換が、求められている。
 

 そのために、多様なお客様期待を取り込み、お客様基点で経験価値を
 
 可視化する日常的な顧客関係性づくりの取り組みと、経験環境をデザインし
 
 お客様価値を創造、提供する取り組みを、一連の機能として組み立て、
 
 全体最適を目指した「Marketing Driven」の取り組みを展開する必要が
 
 ある。
 



混乱の時代に踏み込もうとしているいまこそ、新たな枠組み、コンセプトの
 
創出に向けてスタートを切るべく、時代を構想し、着実な布石を打つ必要が
 
ある。
 

取り組みに正解はない、表現し、議論し、一歩一歩最適解に向けて議論を
 
積み重ねることから、すべてが始まる。
 

そして、だれかが取り組むのではなく、みずから取り組むことを求められて
 
いる。
 

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